Immunoglobulin E, a new class of human immunoglobulin. (1968). Bulletin of the World Health Organization, 38(1), 151–152.
「免疫グロブリンE:ヒト免疫グロブリンの新たなクラス」
同種の皮膚感作活性に関連する抗体の性質の研究により、ヒト血清中にこれまで認識されていなかった免疫グロブリンが存在することが明らかとなった。免疫グロブリンは特異的な抗原決定基によって同定された。また、同様の抗原特性を持つタンパク質が多発性骨髄腫患者、及び健常者の血清からも同定された。「ヒト免疫グロブリンの命名法」[1]と題された以前の覚書に従い、正常タンパク質および抗原的に関連する骨髄腫タンパク質をIgE またはyEと命名し、これらの分子の重鎖ポリペプチドを ε(イプシロン)鎖と呼称することが提案されている。これは従来の”yE-グロブリン””IgND”の代替となる。
IgEには、他の免疫グロブリンクラスと共通する抗原決定基と、特異的抗原決定基を有する。非骨髄腫由来のIgEにはK型、及びL型の軽鎖の決定基があることが判明した。E骨髄腫タンパク質は、L型の軽鎖を持つことが判明した。IgEの特異的抗原決定基はIgG, IgA, IgM, IgDでは検出されていない。IgEに特異的な抗血清は、これら4つのクラス、及び現在認識されているサブクラスの免疫グロブリンと反応しない。逆に、これらのクラス、及びそのサブクラスに特異的な抗血清はIgEと反応しない。
E骨髄腫タンパク質に関する研究により、このタンパク質がそれぞれ分子量約75,500と 22,500の重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドを含んでいることが示された。IgE固有の決定基はその軽鎖には存在しない。IgE決定基は単離された重鎖上で直接的にまだ証明されていないが、以下の理由により存在すると考えられている。
(a) E骨髄腫タンパク質をパパイン[2]で分解すると2種類のフラグメントが生成され、パパインのIgGへの作用により生成されるフラグメントからの類推でFabフラグメントおよびFcフラグメントと命名されている。Fabフラグメントには軽鎖決定基が含まれていたが、IgE 決定基は含まれていなかった。Fcフラグメントには軽鎖決定基が欠けていた。IgE特異的決定基はこのフラグメント上でのみ発見された。
(b) 分子量データが重鎖の一部であるFcフラグメントと一致した。インタクト分子の分子量はおよそ200,000だと判明した。完全還元と完全解離後、タンパク質の20%が分子量約22,500の軽鎖として回収され、1分子辺り2つの軽鎖であることを示している。1分子辺り2つの重鎖を仮定すると、各重鎖の分子量は約75,500と算出された。沈降およびゲル濾過データからの推定により、Fcフラグメントは約100,000の分子量を有していた。
従って、抗原分析と物理化学的データから考慮して、IgE決定基が分子の重鎖に位置していることが示された。IgEの抗体活性に関するエビデンスが存在する。選択された血清由来のIgEは、複数のラジオイムノアッセイ技術により多くの抗原と結合することが証明されている。これらの反応特異性は、他のクラスの免疫グロブリンによる抗原結合の特異性に匹敵する。即時型過敏反応の研究では、様々なヒト血清中に投与されたアレルゲンへのIgEの結合活性が、そのアレルゲンに対して人間の皮膚を受動感作させる血清の能力と相関することが判明した。特定アレルゲンへの非反応性IgE、及びE骨髄腫タンパク質は、この感作を阻害した。同種の受動的皮膚感作を誘発、阻害する能力は、ヒトIgEクラスの特徴である可能性がある。
[1] Bull. Wld Hlth Org., 1964, 30, 447-450.
[2] パパイアから単離されたタンパク分解酵素の一種。システインプロテアーゼに分類される。